『「伝える」ということ』平子 遥山(3年)

氷上奮闘記をご覧の皆様、こんにちは。スポーツウエルネス学部スポーツウエルネス学科3年の平子遥山(ひらこ ようざん)です。

連日の「危険な暑さ」というニュースにも慣れてしまうほどの酷暑が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。私は地元北海道に帰省し、毎日心地良く過ごしています。

帰省中はアイスタイムを求めて、幼い頃にお世話になった少年団の練習に参加させてもらっています。一緒に滑りながら小学生に指導をさせてもらう機会もいただいているのですが、教える立場に立ってみて、むしろ自分の方が多くを学ばせてもらっているというのが正直なところです。今回はその中でも特に痛感した『伝える』ことの難しさについて書かせていただきます。

幼い頃から氷の上にいた私は、スポーツは人を育てるのに非常に有効なツールだと考えています。だからこそ、どんな指導者に出会うかが重要になると考えます。
そもそもコーチという言葉の語源は「大型四輪馬車」であり、客を目的地まで運ぶという意味を持っています。スポーツに置き換えれば、選手が「なりたいと思う自分」に近づくのを支えることになります。とすれば、行き先を決めるのは乗る側であって、運ぶ側ではないはずです。答えをそのまま渡す指導は、選手の目的地を勝手に決めてしまっているのと同じではないでしょうか。

ある日の練習中、小学5年生の子に「今のシュート、打って良かったんじゃない」と声をかけました。本人は頷いてはいるものの、どこか腑に落ちていない表情をしていました。そして案の定、次に同じ場面が訪れた時、その子はシュートを打ちませんでした。
伝わっていなかったのは、私の伝え方の問題でした。
そこで今度は、まず聞くことから始めました。状況がどこまで見えていたのか、何を考えてパスを選んだのか。そのうえで、あのパスは相手に渡ればカウンターになりかねないこと、だからあの場面ではシュートの方が良いと思う、という裏付けを一緒に伝えました。
すると次に同じ場面が来た時、その子が選んだのはパスでもシュートでもなく、キープでした。
正直、驚きました。私はキープしろとは一言も教えていません。それでも「相手にリスクを渡さない」という目的を理解していたから、自分でその答えにたどり着いたのです。教えた通りにできたのではなく、教えていないことができた。この差は決定的だと思います。

目的が共有されると、プレーには選択肢が生まれます。ブレイクアウトで45度からパスを受けた場面で「前に出せ」とだけ教えられれば、前に出すことだけが唯一の正解になります。しかし「ブルーラインを割るため」という目的が加われば、今どのプレーが有効かを自分で考えるようになります。そこから指示は選択肢を一つに狭め、目的は選択肢を広げるのだと感じました。

とはいえ、答えを渡す指導がすべて間違いだとは思いません。
高校時代は、毎年メンバーが変わり、ゼロからチームを作り直す必要がありました。限られた期間で結果を残すには、チームスタイルという型に選手をはめるのが最も効率的です。それ自体は正しい判断だと思います。
ただ、同じ型にはまるにも二通りあります。ただ言われるままにはめられる選手と、自分の強みはどこにあり、それをこの型のどこで活かせるのかを分析したうえで、自らはまりにいく選手。この二人の伸び方はまったく違います。前者は型が変われば何も残りませんが、後者は型を通して自己理解を深めていける。そして、どちらになるかを左右するのは、その型が「なぜ必要なのか」を伝えてもらえているかどうかだと思うのです。

大学生になった今、伝え方の重要性はむしろ増していると感じます。
チームには、それぞれ違う環境でアイスホッケーを積んできた仲間がいて、やりたいことも人それぞれです。そこに自分の考えを言い切りでぶつけても、納得が生まれるはずがありません。だから相手の考えを聞きながら、その時点での最適解を一緒に探すようにしています。
ただ、正直に言えば、まだ自分にはそれが足りていません。つい自分の中の正解を押し付けてしまう場面が、今もあります。
伝える側が持つべきものは、正解そのものではなく、なぜそれが良いのかという裏付けと、相手によって伝え方を変える手間なのだと思います。相手との関係性や性格によって、同じ言葉でも届き方は変わる。その些細な気遣いの積み重ねが、意見の言いやすい風通しの良いチームをつくるのではないでしょうか。
そしてこの夏に得た学びは、私一人のものにしてはもったいないと感じております。まもなく夏合宿が始まりますが、仲間一人ひとりが何を考え、どこを目指しているのかを聞くところから始め、この学びをチームに還元していきたいと思います。

最後になりますが、日頃より温かいご支援・ご声援を賜っておりますOB・OGの皆様、そしていつも応援してくださる皆様に、心より感謝申し上げます。
私たちは一人の選手として、そして一人の人として成長した姿を結果でお示しできるよう、チーム一丸となって努力してまいります。

最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。

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